お客様から頻繁に尋ねられます、「コンデンサーで音は変るのですか?」と。
エレクトリックギターのトーンに使用されるコンデンサは高音だけを通す働きがあります。
その通った高音をどれだけグランドに落とすかをPOTで調整するのがトーン回路です。
どれだけの高音を通すかはファラッドと言う単位で表示される容量で決まります。
例えばGibsonのレスポールは0.02μF(マイクロファラッド)ですね。オールドFenderのストラトは0.1μFです。
数字の大きい方がより高音を通すのでトーンの効きが良いです。つまりよりこもった音になります。
写真はウチにあるコンデンサですが、Fenderタイプに使われるセラミックコンデンサや、
Gibsonに使われるフィルムコンデンサです。
マニアに人気のバンブルビーやブラックビューティーも見えますね。
これらは左上のオレンジドロップ以外は30年以上前に製造された古いものです。
一番手前のセラミックコンデンサに見られるように、容量は .1 と表記されてますね。
20%というのは誤差です。20%の誤差、、、(誤差と言えるのか?普通誤差って数%程度のことちゃうの?)
つまりこのコンデンサは0.08だったり0.12だったりしますよ、ということなんです。
この誤差が古いものの場合、かなり大ざっぱで「どこが20%やねん!」と突っ込みたくなることも少なくありません。
まあ、大ざっぱな国が大ざっぱな時代に作った部品ですから仕方ないかもしれんが(笑)
そこで実際にどれだけの誤差があるか計ってみましょう。
右上に写っているのがキャパシターテスターです。
きちんとキャリブレイションされているものです。電圧も600Vかかるのでアンプパーツの測定にも使えます。
これで計ると現行品のオレンジドロップは数パーセントの誤差でしたが、オールドはかなりええ加減なんです。
手前の薄茶色のセラコンは0.1の表示に対して0.07くらいです。3割減ですな。
その横の赤いスプラグの耐圧500Vの0.05セラコンはほぼ表示どうりですが、
右上の同じくスプラグ25V耐圧のものは表示0.047に対して0.07くらいです。なんと1.5倍の容量です。
緑色のCRLの.047はほぼOK。ブラックビューティーは.033に対して実測値は.042でした。27%の誤差っす。
一番上に写っている薄茶の0.1のものは0.08でした。
バンブルビーはちょい少なめですが、まあOKの数値です。
これだけ容量が変われば音も変るわけで、コンデンサーを換えたら音が変ったというのは、
このひどい誤差が原因であることも考えなくてはなりません。
「でもオレはいつもトーンは10だから関係ないぜ!」というロックンローラー君、そうはいかんのだよ。
ギターに使われるロータリーポテンショメーターというPOTの構造上、
トーンを10の位置にしても若干コンデンサがついてる端子の方に電気が流れてしまうのです。
つまりトーンを10にしてもほんの少しコンデンサーを噛ませた音になっているのです。
この若干のハイ落ちがギターをギターの音たらしめているところもあるので、悪いことではありません。
トーン回路を外したギターはキンキンとやかましい音になり、私は大嫌いです。
しかしそれが好きだという人もいるでしょう。好みは人それぞれ色々ですから、どっちが良い悪いの問題ではありません。
んで、「コンデンサーを換えたら音は変るか」という御質問ですが、答えはYes。
容量を変えたら音は少し変ります。
また耐圧や、セラミックやフィルムの種類といった絶縁体の種類でも変わるでしょう。
しかし1番大きく変わるファクターは容量です。
この容量が現行品なら問題ありませんが、オールドコンデンサーはかなりの誤差があることを忘れないで下さい。
世間で言われている各種オールドコンデンサの評価において、
この誤差をきちんと計測して考慮の上評価しているかどうかは極めて疑わしいのです。
というわけで、コンデンサーを換えたら音は変りますが、それだけで音が良くなるということではありませんよ。
それだけで良くなるのだったらアタシャ苦労しませんて。
*当店では特に御指定が無ければオレンジドロップを使いますが、写真にあるコンデンサでももちろんOKです。
御気軽に御問い合わせ下さい。